研究概要 |
水中に溶解している糖やタンパク質を濃縮単離する方法として限外濾過が有効であるが, この方法では数気圧程度の加圧を駆動力とする膜透過により, 大量の水を系外へ除去する必要がある. 本研究では高分子量球状溶質の希薄水溶液から溶質を膜に選択吸着させ, これに圧力をかけてその濃縮液を透過させるという, 新しい省エネルギー型の分離濃縮システムを試みた. まず単分離散ポリオキシエチレンとトリレンー2,4-ジイソシアナートとから, 両末端にイソシアナート基をもつポリオキシエチレン1__〜を合成した. 1__〜を活性加剤に用いて双環オキサラクタム2__〜のアニオン重合を行い, ポリアミド鎖3__〜(A)とポリオキシエチレン鎖(B)とから成るABA型ブロック共重合体4__〜を合成した. ポリオキシエチレングリコールを添加して調製した, 4__〜の多孔性膜を用いて, ミオグロビンおよびチトクロムC水溶液を加圧下で透過させると, 透過液の溶質濃度が仕込液濃度より高くなった. 4とポリオキシエチレングリコールとを重量比10:3で混合して調製した多孔性膜を用いた場合, 濃縮率(仕込液の初濃度に対する透過液の濃度比で表す)が最高6.2倍に達した. 仕込液中のミオグロビンの初濃度が0.01〜0.03wt%で極大になり, それ以上の濃度では低下した. 電解質の添加, pH, 撹拌速度, 操作圧などにも濃縮現象は強く影響された. この特異な透過濃縮システムは, 膜孔の壁面を含む膜表面にタンパク質分子が大量に, しかし適度に弱く吸着することと, 生じた高濃度層が加圧により膜中から押し出されることとの組合せからなると思われる.
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