研究概要 |
人工細胞リポソームは医学や遺伝子工学への応用を目的とした構造安定化や認識機能の付与といった機能上要求される問題が多くなってきている。本研究代表者らは既に組織指向性多糖被覆リポソームを開発しており、本研究では、更に、膜糖タンパク質を組み込んだリポソームの開発を行った。 まず、人工境界脂質としてアミド残基を有する1,2-ジミリストイルアミド-1,2-デオキシホスファチジルコリン(DDPC)を合成した。またリポソームに組み込む膜タンパクとして、ヒトA型赤血球からグリコホリンを単離精製した。得られたグリコホリンは分子量7万4千に単一バンドをもつ2量体であった。卵黄レシチン,スフィンゴミエリン含有卵黄レシチンあるいはDDPC含有卵黄レシチンにより形成されたリポソームへのグリコホリンの組み込み率を求めた。その結果、DDPCはスフインゴミエリンよりもグリコホリンの保持率が増大し、DDPC40モル%含有リポソームでは単純リポソームに対し実に10倍量のグリコホリンが再構成された。これはDDPCが通常の脂質よりも膜タンパク質との相互作用が大きいということを示している。さらにグリコホリンを組み込んだリポソームでは、構造安定化も達成されることが、リポソーム内にカプセル化されたカルボキシフルオレッセンの自然流出あるいは血清・血漿誘起漏出が抑制されることより明らかになった。 現在では、グリコホリン組み込みリポソームの糖鎖認識をin vivoおよびin vitroで検討しており、その成果は来年度に報告する予定である。
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