研究概要 |
p-フェニレンジアクリル酸ジフェニルエステル(p-PDAP)とジp-ニトロフェニルエステル(p-PDANP)の光固相重合を行い,反応率と反応時間の関係を比較することによって,ニトロ基が光増感効果を示すかどうかについて検討した。所定の時間ごとに重合系より一定量の試料を取り出し,ポリマー/モノマー混合物のIRスペクトルを測定し,C=C二重結合の減少から反応率を求めた。【No_2】基を有するp-PDANPの方が二重結合速度の減少速度が小さく,期待された増感効果は認められなかった。また空気中および窒素中において反応速度に差がなく,重合速度に対する雰囲気の影響はみられなかった。 p-フェニレンジアクリル酸のエステルは光固相重合によって,主鎖中に交互に芳香環とシクロブタン環を有する剛直なポリマーを与えるので,得られたポリマーは溶液中で棒状のコンホメーションをとることが予想される。しかし,これらのポリマーはそのほとんどが強酸にしか溶解しない。そこでα,α´-ジシアノ-p-フェニレンジアクリル酸ジη-プロピルエステルを光固相重合した後,加水分解によってポリα,α´-ジカルボキシ-p-フェニレンジアクリル酸ジ-η-プロピルエステルを合成し,その高分子電解質としての挙動についても検討した。0.025M〜0.4Mの水酸化ナトリウム水溶液にポリマーを溶解し,それぞれ同濃度のアルカリまたは水で希釈して粘度を測定した。アルカリで希釈した場合,ポリマー濃度の減少とともに粘度は直線的に減少した。水で希釈したときは希釈とともに粘度が著しく増加し,初めのアルカリ濃度が高いほど,粘度の増加は減少した。これらの挙動はランダムコイルのコンホメーションをとる高分子電解質の挙動と類似のものである。恐らくp-フェニレンジアクリル酸エステルのポリマーは溶液中で大きなループを作り屈曲したコンホメーションをとっているであろう。
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