61年度と62年度における研究で、リンゴ酸ポリマーは合成可能で、in vitroでは長時間かかって主鎖エステルが加水分解を受けることが見い出され、リンゴ酸ポリマーは修飾可能なラクチド型生体内分解性高分子プロドラッグのキャリアーとして利用できる可能性がでてきた。そこで最終年度に当たる63年度においては、このことをin vivoで確かめるために、5-フルオロウラシル(5FU)担持リンゴ酸ポリマーを合成し、マウスを用いてP388白血病細胞に対する制がん活性を評価した。その結果、以下のことが明らかになった。 1.高分子反応という手段により、目的とするリンゴ酸ポリマー/5FUコンジュゲートを合成することができた。 2.In vitroでの加水分解では、今回合成したコンジュゲートからはまず5FU自身がリリースし、そのあと長時間かかってキャリアーであるリンゴ酸ポリマーの主鎖が分解して行くことがわかった。このことより、コンジュゲートが5FUの高分子プロドラッグとし働くことがin vivoで期待できるようになった。 3.制がん活性は、P388白血病細胞をマウスに腹腔内投与(ip)したあとサンプルをip投与し、無処置群の生存日数に対する投与群の生存日数の比を求めて延命率(T/C)より評価した。その結果、未反応カルボキシル基を一部アルキル基で保護したり、疎水性スペイサーを介して5FUを担持したコンジュゲートに注目すべき延命効果が認められることより、高い延命効果の発現には親永性疎水性のバランスが重要であることが示唆された。なお、高投与量においても、マウスの急激な体重減少は見られず、5FUをリンゴ酸ポリマーに担持することにより、5FUの強い副作用がよわまり、高いT/C値が得られたものだと考えられる。
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