プロテアーゼ・インヒビターとして青かび中より発見されたリンゴ酸ポリマーは側鎖にカルボキシル基を持つポリラクチド型生体内分解吸収性ポリエステルであることからドラッグ・キャリヤーとしての利用の可能性があり、注目すべき高分子材料と言える。リンゴ酸ポリマーは合成可能でポリ (β-リンゴ酸) およびポリ (α、β-リンゴ酸) の合成が報告されている。 本研究では、ポリ (α-リンゴ酸) の合成法の確立を計り、その加水分解性を調べることにより、ドラッグ・キャリヤーとして合成ポリ (α-リンゴ酸) を使って行けるか否かをin vitroで検討した。その結果、次のことが明らかとなった。 1.L-リンゴ酸のβ-ベンジルエステルの環状ダイマーであるマライドベンジルエステルの開環重合という手法により、分子量1000〜3000の目的ポリ (α-リンゴ酸) を合成することができた。 2.今回合成したポリ (α-リンゴ酸) は、in vitroでは長時間かかってランダム分解を受け、ドラッグ・キャリヤとしての利用の可能性が示唆された。 3.5-フルオロウラシル (5FU) 担持リンゴ酸ポリマーを合成し、P388白血病担がんマウスに腹腔内投与して、無処置群の生存日数に対する投与群の生存日数の比を求めて延命率 (T/C) を求めて制がん活性を評価した。その結果、未反応カルボキシル基をアルキル基で一部保護したり、疎水性スペイサーを介して5FUを担持したコンジュゲートに注目すべき延命効果が発現し、高投与量においてもマウスの急激な体重減少は見られなかった。この結果より、ポリ (α-リンゴ酸) をドラッグ・キャリヤーとして利用することが可能であることが示唆された。
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