研究概要 |
本年度の前半は、先に堤出した研究実施計画に基づき、1.会合性コロイド状凝集剤理論の確立、2.この理論を応用したリン,重金属イオンなど水圏の汚染原因物質の除去、3.コロイド化吸着用の高性能吸着剤の開発-の三点を主な課題として、研究を行った。そのうち、1については、大きな成果が得られ、後掲発表予定論文の如く、理論の確立が基本的には完了した。2については、研究の遂行上、部分的に若干の困難が生じた。すなわち、リンの効果的除去のために、リン酸イオンと結合し、電荷中和に起因するコロイドを生成せしめる反対電荷の高分子電解質として、ポリビニルピリジン,ポリエチレンイミンなど種々探索したが、いづれも結合平衡定数が小さく、コロイド形成剤として、不適当であることが判明した。これに対して、陽イオンの重金属の除去については、いくつか(例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなど)の負の高分子電解質と電荷中和型の強い結合をつくり、コロイド形成にいたること、従って、このために、負の高分子電解質の添加によって、アルミナなどへの重金属イオンの吸着容量が著しく増大することが見出された。 このような研究経過を踏まえ、今年度の後半は、リンを効率的に除去する吸着剤の開発に重点的に取組んだ。吸着剤開発のベースを従来からリン酸イオンの吸着回収によく使われているアルミナにおき、これの調製条件による吸着性能の変化について、種々検討した。その結果、水酸化アルミニウムの湿潤ゲルを乾燥してキセロゲルを得る過程で、乾燥条件によって吸着性能が大きく変化することを見出した。例えば、最適条件下では、従来のアルミナに比べて、吸着性能が約2倍に改善される。現在、この原因などについて、さらに研究を進めている。
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