研究概要 |
研究の第二年度として, 初年度に得られた実験的情報と既往のデータを総合し, キレート抽出系における金属抽出の平衡と速度を推定する手法について検討を加えると共に, 界面活性剤から自発的に形成されるマイクロエマルジョン(ME)を用いて, 溶媒抽出法の高度化をめざした抽出分離場の研究をおこなった. 1.金属溶媒抽出の平衡論と溶媒・希釈剤設計: 種々の官能基からなる溶媒, 希釈剤混合系における過剰自由エネルギーを推定できるグループ溶液モデルを, 擬化学平衡近似と官能基局所モル分率の概念を導入して, 作成した. このモデルは, 局所モル分率のとりかたによって, 既往のASOGモデルに還元される. 水や親水性の官能基からなる分子系にも適用できるので, 現在これを溶媒抽出系に適用し, 相互作用パラメターを決定しつつある. 2.液液界面状態の解明及び金属溶媒抽出の速度論と溶媒・希釈剤選定: キレート溶媒分子, 2官能性をもつ界面活性剤を含む系の界面張力を実測し, 界面活性剤から形成されるMEの大きさは, 界面の弾性歪がなくなる自然の曲率によって決定されることが分かった. また, このMEには, α-オキシムは取り込まれるが, 汎用のβ-オキシムや有機りん化合物は取り込まれないことがわかった. 現在, 界面吸着に対するグループ溶液モデル及びME形成の統計力学モデルを作成中である. 金属溶媒抽出の速度に関しては, 種々のβ, αオキシム系について実験的検討を行い, 界面反応速度はオキシムのpKa値と相関づけられること, 及び, 同系の触媒効果は著者らがすでに発表したモデルで説明がつくことを明らかとした. さらに, ME系は乳化液膜と同等の分離場を提供することを示した.
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