本研究においては多数のX型熱線プローブを用いて自由噴流内の速度を同時多点測定することにより、瞬時の速度ベクトル線図をえがき、自由噴流のノズル近傍の初期領域から完全発達領域にいたるまでの渦の変化過程を明らかにした。又変動速度のエネルギースペクトル及び3次元方向に距離を取った相関係数を測定し、前述のベクトル線図とつきあわせることにより渦の3次元構造の現出と乱流の発達過程について明らかにした。その知見を要約すると次のようになる。ノズル径基準のレイノルズ数が約5000以下3000以上の場合、ノズル出口壁のshearによってまず円柱状のlarge eddyがほぼ規則的に発生し、下流に行くにしたがって干渉し、合一する。その合一はノズル出口より下流にノズル巾口の3倍程度(x/D=3)行くとほぼ完了し、周波数が2倍のlarge eddyを形成する。それ以後は渦の合一は起らず、周囲流体を巻きこむようにして成長する。x/D≒5になると成長した渦にゆがみが生じ、流れの3次元性が顕著になる。ポテンシアルコアはわずか存在しているが、large eddyの噴流軸に関する対称性はほとんどない。x/D≒7になるとlarge eddyは噴流軸をこえて全域をおおう。渦の形状はほぼ3次元的で、ポテンシアルコアはほとんど存在しない。x/D≒10になるとこのlarge eddyはゆがんだ形状になり、あるいは分裂したりして3次元性および不規則性の強い発達した乱流になる。流入する大きな流れと流出するそれが干渉してlarge eddyをreformしまた分裂させる。以後これをくり返し、その周りや内部にはsmall eddyが多数存在している。レイノルズ数が約5000をこえるとノズル出口近傍での円柱状のlarge eddyはすぐに切れ切れになり、薄い円板状の渦となって下流に流れていく。即ち、ノズル出口ですでにほぼ3次元的な渦になっている。その後の渦の合一及び完全乱流への発達はレイノルズ数が5000以下の場合と基本的には同一である。
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