研究概要 |
使用済ウラン核燃料の湿式再処理施設周辺の環境放射能安全防護の確保のために, 溶解液中に残留するヨウ素を気相に放出して, 銀吸着材により固定化する技術の確立が重要課題の一つである. 残留ヨウ素の化学形は, I^-またはIO_3^-であるから, 溶解液中にNO_4を吹き込んで生成する酸化還元両性をもつHNO_2によって, I^-の酸化とIO_3^-の還元を行なって, 揮発性のI_2に変換することが試みられている. しかし, これらの酸化還元反応速度は殆ど不明である. 本研究の目的は上述の反応速度の解明であり, 本年度は温度依存性を中心に研究を進めた. 得られた主な成果は, 以下のように要約される. (1) 酸性水溶液中の亜硝酸の自己分解は, 三段階の逐次可逆反応機構に従い, 硝酸生成段階が律速過程である. また, この反応は比較的緩慢であるため, 初期において溶存酸素の影響を大きく受ける. さらに, 本反応の総括反応速度定数および総括反応平衡定数の温度依存性も明らかにした. (2) 亜硝酸によるI^-のI_2への酸化は迅速反応であり, 反応速度はI^-, H^+およびHNO_2の濃度により複雑に変化する. さらに, 温度依存性は複雑で, 条件により負の温度係数を示す場合もある. 初期反応速度解析に基づいて, 広い濃度および温度範囲にわたる複雑な依存性を定式化した総括反応速度式を導いた. 初速度解析から求めた総括反応速度式及び速度パラメータ値の妥当性は, その積分計算結果と回分実験における生成分子状ヨウ素濃度の経時変化の一致性によって確認された. (3) 亜硝酸によるIO_3^-のI_2への還元反応は, 初期の極めて長い誘導期の後に, 円滑にI_2を生成する自触媒効果をもつ複雑な反応である. 後期の総括反応速度は, 微分解析と積分解析の併用により定式化された. しかし, 得られた総括速度式では, 初期の誘導期を十分に説明できない. 現在, 誘導期を含む総括速度式について検討中である.
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