ポリビニルアルコール(PVA)を分解資化する共生細菌系は、PVA分解菌とそれが必須の増殖因子として要求するピロロキノリンキノン(PQQ)を供給する細菌とによって構成される。これまでに、分解菌におけるPQQの作用酵素を検索し、従来知られていなかった、PQQ関与のPVAデヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)が存在することを見出した。本研究では、本酵素を精製し、酵素化学的諸性質を明らかにするとともに、その生理的意義、および同タイプの酵素の微生物における分布について検討した。 1.PQQ関与PVA脱水素酵素の精製と性質。分解菌Pseudomonas sp.VM15Cの細胞膜画分より、本酵素をディスクゲル電気泳動的に均一になるまで精製した。精製酵素の分子量は、57000、等電点は6.1である。また、この酵素は第1級アルコールに活性を示さないが、PVAのほかにも、種々の低分子第2級アルコールを酸化する広い基質異性を有しており、PQQを補酵素とする、いわゆるキノプロティン酵素として初例の第2級アルコール脱水素酵素であることが明らかとなった。 2.PQQ関与PVA脱水素酵素の生理的意義。分解菌にはPVA酸化酵素として本酵素以外にも、従来より知られるPVAオキシダーゼが存在している。本酵素の生理的意義を変異処理によって得たPVAオキシダーゼ欠損株などを用いて検討した結果、PQQ関与PVA脱水素酵素によるPVA酸化反応は、細胞膜のチトクロムの還元を引き起こし、呼吸鎖に共役していることが明らかとなった。 3.PQQ関与第2級アルコール脱水素酵素の分布。PQQ関与の第2級アルコール脱水素酵素の微生物における分布を調べるため、種々の低分子第2級アルコール資化性菌を土壌などより多数分離し、それらのアルコール脱水素酵素を調べた。しかし、これらの酵素はすべてNAD関与のものであった。PQQ関与の第2級アルコール脱水素酵素は、極めてユニークなものであると考えられる。
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