研究概要 |
1.西欧中世石造建築の設計法 12世紀中葉北部フランスに誕生し、13世紀前半に古典的様式に達したゴシック建築の中で最も雄大な作例であるアミアン大聖堂の設計法について、ゴシック建築の古典説を大成させた19世紀の学者ヴィオレ・ル・デュックの断面解析を取りあげて検討した。彼は、エジプト三角形なるものの適用として断面の設計法を考えている。しかし、2段に組み合わせられたエジプト三角形の上の図は不正確であること、斜線を利用することもあって主要各部の決定位置がずれていること(Dehioの同断面図において2mm〜1cmのずれ)、最も重要な扶壁厚の説明がないことなどを指摘した。ちなみに、既に明らかにしたことであるが、筆者パンテオン図法(双正方形双円形接合図形)を用いて、各部の位置の決定法を明らかにし、支柱厚や扶壁厚はその図法の回廊反転法(スパンをSとするとS=【(2-(V!2))/4】Sとして決定する方法)によって決定されることを示した。 2.石造天井のフリーハンド施工法の実験 ケルン大聖堂の内陣天井の実物大フレーム装置を利用してフリーハンド工法の実験を行なった。迫石は、長さ31.2cm,高さ26.8cm,厚さ15.3cmの大谷石(比重1.5)を用い、モルタルは、消石灰1と川砂4(重量比)を混合させたものを用いた。(1)空積みの場合:迫石接触面を45度までフリーハンドで積むことができた。(2)モルタル積みの場合No1:迫石接触面を60度とした時は、石層をフリーハンドで容易に積むことができた。(3)モルタル積みの場合No2:迫石接触面を75度とした時は、モルタルだけでは不可能で、ラッソーの簡単な石塊・ロープ工法を応用して積みあげることができた。ケルン石造天井の頂線の対水平角度は75度であるので、この実験により、頂点まで迫石をフリーハンド積みできることが判明した。
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