異種細胞質カンラン系統の育成とその評価 植物の細胞質がもつ遺伝要因の解析が進むにつれて、それら、耐病性、薬剤耐性、雄性不稔性など農業形質と深いかかわりをもつことが明らかとなってきた。 本研究では、我国の重要野菜であるカンラン類で異種細胞質系統を育成し、それらの評価と今後の展望を試みた。 1)ハクサイ類細胞質カンラン系統 合成ナプス(2n=38)に四倍体カンランを連続4回戻交雑し、四倍性アロプラズミック系統を育成した。これを基に二倍体栽培型が育成可能である。 2)クロガラシ細胞質カンラン系統 合成キャリナータ(2n=34)に四倍体カンランを連続4回戻交雑し、四倍性アロプラズミック系統を育成した。これを基に二倍体栽培型が育成可能である。 3)ダイコン細胞質カンラン系統 合成ラファノブラシカ(2n=36)に四倍体カンランを連続4回戻交雑し、四倍性アロプラズミック系統を得た。さらに、二倍体カンラン類による戻交雑で、栽培型のアロプラズミック系統を育成した。二倍体のものは雄性不稔性を示し、F_1種子の生産に有望な素材を提供した。 4)エルカ、シナピスなどの他種属とカンラン類の交雑で雑種植物を作出した。それらの後代は、新たなアロプラズミックラインを育成するための素材となりうると考えられる。 5)異種細胞質系統の育成過程における細胞遺伝学的調査から、異種ゲノム間の遺伝的組換えの可能性が示唆された。また稔実性と染色体行動との間にも深い関連があると思われる。
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