研究概要 |
ニンジン培養細胞は、2.4D存在下では活発な脱分化的増殖を行なっているが、2.4Dを含まない培地へ移すと、分化即ち比較的重い細胞集団が不定胚(形態的分化)、軽い細胞がアントシアン合成(代謝的分化)というように同一のtriggerに対して異なった応答を示す。膜電位を指標にすると、前者は-150〜-200mvという値を示すのに反し、後者は-60〜-80mv程度である。又前者は2.4Dを含まない培地へ移植後、不定胚形成過程の進展に伴ないこの値は変らずほゞ一定に保たれる。後者は2.4Dを含まない培地へ移植後、2〜3日(アントシアン合成に先行して)に20〜30mvの過分極が見られ、以後アントシアン蓄積後は一定に保たれ、起電性成分も存在しなかった。この期の細胞は比較的小さい、30〜80μmのの細胞塊(5〜6コの細胞より成る)についての結果であるが、この細胞塊が形成されたであろう単細胞のレベルでは-150〜-200mvを示す細胞を見い出すことは出来なかった。今のところ不定胚形成細胞が単細胞から数コの細胞から成る細胞塊へ移行する過程でいつ膜電位を獲得したのかは不明である。又生化学的マーカーを得るために、これと並行してより効率良く、不定膜形成,アントシアン合成が見られる条件の検索を行った。前者は2.4Dを含まない培地へ移植後より活発な増殖を、後者は増殖停止と伸長生長を指標とした。この点については現在次の2点を確認している。培地は基本となるhin Staba培地を塩成分のみ【1/10】にうすめるか、P,Nのみ【1/10】にうすめるか(糖,Zeatinは不度)の場合、不定胚、アントシアン合成ともに良好な結果が得られた。いずれも移植後の細胞濃度に大きく依存する。細胞濃度は酵素の供給さえ充分であれば、径の小さい(細胞がとほらない)トワシュを用い多見の外液(培地)と液交換可能にしてやれば、細胞濃度が大でも良いことから分化(不定胚形成、アントシアン合成)を阻止する透析膜非透過性物質が細胞から放出していると思われる。
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