研究概要 |
(1)栄養要求性と細胞増殖サイクルの関係・栄養要求性の異なるタバコ培養2株(従属栄養株と光混合栄養株)を用いて細胞増殖の様態を解析し以下の結果を得た. 1)光混合栄養株の増殖サイクルは従属栄養株のそれに比べて有意に長い. 2)光混合栄養株の長い増殖サイクルは移植後の長い誘導期と対数増殖期のゆるやかな増殖速度の二つの要因にもとづく. 3)光混合栄養株の長い誘導期は株に固有の光に影響を受けない形質であり, 一方対数増殖期のゆるやかな増殖速度は光に依存した形質である. (2)細胞増殖サイクルと呼吸活性の変動:従属栄養株を用いて細胞増殖サイクルとミトコンドリアの呼吸活性について調査し以下の結果を得た. 1)ミトコンドリアの呼吸活性は誘導期に上昇し対数増殖期に最大となる. 2)ミトコンドリアは誘導期に呼吸調製能およびATP合成能を獲得し, 対数増殖期を経て定常期に至り再び機能を失なう. 3)シアン耐性呼吸鎖の活性および稼動率はチトクローム系呼吸鎖の活性と同様対数増殖期のミトコンドリアで最大となる. (3)膜結合型オーキシン受容体の可溶化とその特性解析:タバコ懸濁培養細胞を用いて膜結合型オーキシン受容体(MABP)を可溶化しその特性を解析して以下の結果を得た. 1)TritonX-100によりMABPの可溶化に成功した. 2)MABPの可溶化率は最適条件下で80%以上であった. 3)可溶化MABPのオーキシンとの結合活性, 結合の至適温度, 至適pH及び特異性は膜結合時のそれと変らなかった. 4)可溶化MABPのオーキシンとの結合速度及び解離速度は膜結合時のそれよりも大きかった. 5)可溶化MABPは熱に極めて不安定であり, プロテアーゼ処理によりオーキシンとの結合活性が完全に失われた. 6)MABPは細胞質可溶性オーキシン受容体とは独立の存在であると結論された.
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