研究概要 |
大麦の同位酵素のうち, 遺伝的変異に豊むエステラーゼ(EST)とアスパラギン酸アミノ転位酵素(AAT)の同位酵素について調査した. 一.前年度, ESTについて調べた大麦約3000品種を用い, 本年度はAATの同位酵素の遺伝的変異を調査した. その結果, Aat-3遺伝子座には2つの対立遺伝子が分化し, その1つは世界の広く分布するが, 他の1つは北インドネシアとネパールに集中していることが判った. 2.Aat-3遺伝子の連鎖分析の結果, この遺伝子座は第3染色体短腕部に座乗し, uzとalの中間部, ac-2遺伝子座と連鎖してことが明らかになった. 3.ESTについては, Est-1, 2, 4は互いに密接に連鎖し, 第3染色長腕末端部に座乗していることが判った. 4.これら遺伝子ブロックの近くに, 育種上, 極めて有用な遺伝子座が連鎖している. それらは, わが国の二条大麦品種育成上有効な遺伝子, 縞萎縮病抵抗性遺伝子および受精競争遺伝子(ga-2)の3遺伝子座である. 5.とくに, 縞萎縮病抵抗性遺伝子とEST遺伝子ブロックの密接な連鎖関係の発見により, 育種の現場ではEST同位酵素の遺伝的差異を利用し, 幼苗検定が可能となり, 選抜効率をより高めることができた. 6.各種同位酵素の遺伝的変異の検出のための電気泳動法の改良については, とくにでん粉ゲルの緩衝液の組成を検討し, AAT同位酵素の泳動法は新しい技術として確立された. 7.得られた結果は, 大麦品種の特性として, データベースを構築中であり, 検索システムは完成した.
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