研究概要 |
世界の各地域から収集した大麦約3,200系統について、同位酵素に関与する3遺伝子座の遺伝変異を調べた。得られた結果は、つぎのように要約される。 1.6-リン酸脱水素酵素(PGD)およびアコニット酸ヒドラターゼ(ACO)に関する電気泳動法を確立した。 2.PGDについては2遺伝子座(Pgd-1およびPgd-2)、ACOでは1遺伝子座(Aco-1)で、それぞれ2遺伝子の変異がみられた。 3.Pgd-1とAco-1遺伝子座の遺伝変異は、極めて限られた地域で認められた。すなわち、前者はネパールとパキスタンで、後者の変異はイタリアの系統に限られていた。 4.Pgd-2遺伝子座の変異はトルコと欧州で多く、また、ネパールを除くアジアの地域でも僅かにみられた。日本の系統では、北日本で栽培される系統に多くが、この変異遺伝子をもち、1例を除き、すべて小穂非脱落性遺伝子型に関して西域型であった。このことは、これらの系統の起源が欧州に由来することを示す。 5.前年度の結果を併せて、供試した系統の同位酵素に関与する7遺伝子座の情報をデータ・ベースとして構築し、多重検索できるシステムを開発した。このデータ・ベースには、各系統の系統名、登録番号、収集地および系統識別のための特性、小穂非脱落性と雑種弱勢(科研一般研究C56560005)に関与する遺伝子型も併記してある。 6.このデータ・ベースは研究成果報告書の末尾に掲載し、広く関係する研究者に配布した。
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