1.三島の夏の長日下で出穂できない野生イネやindicaの強い日長反応性が複数の遺伝子の働き合いの結果であることがわかった。個々の遺伝子の作用は三島の自然日長下で出穂できるほどの強さであった。 2.1の遺伝子の中に、補足的な働き合いをするものがあることがわかった。それは発生イネ、栽培イネを問わず、また栽培イネではindicaとjaponicaを問わず、さらに材料の収集地点に関係なく広範に認められた。なおこの場合にも補足遺伝子作用だけでは三島の自然日長下で出穂しないほどの強い日長反応性を発現することはなかった。よって上記環境下で未出穂となる系統の強い日長反応性は3つ以上の遺伝子の働き合いによることがわかった。 3.日長反応性に関与する遺伝子座は、アイソザイム遺伝子との連鎖関係などから少なくとも4つあると考えられた。うち2つは2で述べた補足遺伝子でその一方は第1連鎖群のSe(=Lm)座と思われる。補足遺伝子ではない残り2座は、それぞれCa+-1およびPox-1に連鎖しているらしい。 以上に基づき、イネの適応性や進化に対する日長反応性遺伝子の役割りを以下のように推定した。野生イネからの進化の過程で生じた日長反応性のそう失は段階的に起こった複数の突然変異に起因する。日長反応性のそう失によって生じた早生品種は畑地環境、高高度、高緯度など多様な環境への栽培品種の拡散を可能にした。japonicaはその過程で生じた亜種で、indicaとjaponicaの日長反応性の差異は季節的隔離の機構として両亜種の分化を促進した。 なお研究の過程で抽出された日長反応性遺伝子に関する同質遺伝子系統を育成中である。
|