キュウリ、品種もがみと長日落合二号の、受粉または無受粉子房にベンジルアデニン(BA)を処理し、その果実生長促進効果を調べた。BAは受粉しないもがみでのみ生長促進効果を示した。単為結果力はもがみで小、長日落合二号で大であったので、BAは、受粉によって、および、元来の単為結果によって結果、生長を開始した果実の生長をさらに促進するものではなく、結果に至らなかった子房の生長を促進するものであることが明らかとなった。全果の平均値にもとづけば長日落合二号ではBAの生長促進効果は見られなかったが、個々の果実の生長量の度数分布を求めると、受粉しない場合は明らかな2つのピークに分かれ、小さい方のピークは開花日の子房と同じ大きさであり、大きいピークは受粉した果実と有意差の無い大きさであった。そして、BAを与えれば小さいピークは大きい方へシフトし、大きいピークには変化はなかった。この事実から、受粉しない子房では、受粉した場合と同じように生長が進むものと、全く生長しないものとの2グループに分かれ、BAは後者に対して生長促進効果を持つことがわかった。このことから、単為結果とは受粉しない場合に何らかの要因によって決定されるtrigger反応であり、BAはこのtriggerの代わりになるのではなく、triggerのかからなかった子房を生長させることに働いていることが示唆された。以上のBAの作用はナフタリン酢酸の作用と全く同じであったことから、これらの植物ホルモンの働きは互いによく似ているものと考えられる。このtrigger反応BA作用と内生オーキシンレベルとの関連を調べたが、オーキシンを検出するには至らなかった。今後は、感度の高いイムノアッセイと分取クロマトグラフィーとの組合わせによって内生オーキシンを検出、定量し、単為結果およびBAの作用における内生オーキシンの役割を解明する予定である。
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