研究概要 |
その来歴や類縁関係に不明な点が多いカキ属植物の分類に関する知見をうるために、その種、品種について、諸形質を変数とした数量化理論による数量分類と、葉の各種アイソザイム分析よる化学分類学的手法を試みた。 数量分類は42品種の種苗特性分類調査報告書を基に、変数となる形態形質は、それぞれに関して葉枝13、葉18、花10、果実53、計94形質を用いた。計算法は数量化理論第3類を適用した。アイソザイム分析には新葉100gを用い、まず各酵素の最適分析時期を決定するために、展葉直前、同中、完全展葉について分析した。この結果に基き、カキ(Diospyros kaki)24品種、マメガキ(D.latus)、リュウキュウマメガキ(D.kuroiwai)、アメリカガキ(D.virginiana)2系統、ラオヤーシー(D.rhombifolia)、アブラガキ(D.oleifera)を用い、9酵素について電気泳動Davis法に基ずき活性染色した。 数量化理論第3類による計算の結果、主要栽培品種中、平核無がとくに遠く位置したのは、種子の形質が唯一無核であった結果である。これを除くと、次郎、富有と西条、筆柿が最も離れ、御所系品種は集団化した結果となった。葉から抽出したアイソザイムを、展葉時の段階別に活性染色した結果、Peroxidaseは完全に展葉した段階で良い結果がえられたが、他の酵素は展葉直前で最も活性が強かった。この条件で各酵素を活性染色した結果、Peroxidase、Esterase,Phosphoglucomutase,6-phosphogluconate dehydrogenaseでは明瞭なパターンがみられた。他の5酵素でも活性はみられたが弱く、バンド数の決定は困難であった。種間では明らかに各酵素における主要バンドに差が認められ、また品種間においても、パターンに差異があることを指摘しえた。今後は活性の弱い酵素の分析条件の検討を行うと共に、より多くの種、品種を用いた分析を行い、数量分類の結果や他物質の結果も併せたカキ属の類縁関係や分類について考察を行いたい。
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