研究概要 |
整枝せん定法の差異として、立木と棚仕立ての木の生産構造上の特性は、立木が材形成力が高く、果実への分配率が低い傾向を筆者が既に報告した。 日本ナシの大部分は台風による落果防止のために棚仕立てに整枝した栽培であり、本研究の課題としては、近年主要品種として日本全域に増植された新水,幸水,豊水のいわゆる三水の品種間差異と地域間差異を、生産構造と果実への乾物分配率の両面からの検討を試みた。 1年目の調査結果として、新水が早生でありながらも、他の熟期の遅い2品種よりも材形成力がかなり高い傾向がみられた。その傾向は本年調査した福島,鳥取など日本のナシの主要産地の県の試験場の模範的な整枝せん定を実施し、かつ生産量向上を試みている木においても認められた。 栃木県内における供試樹の継続調査においても、単位葉面積当たり同じ着果数(4-6果/【m^2】,LA)でも葉面積1【m^2】当たり果実生産量は約1、1と1、4kgと豊水よりも10-20%低い傾向を示した。 果実品質を代表する糖度は、単位葉面積当たり果実生産量と負の相関関係を示しやすいが、せん定法の差異として、短果枝に着生した果実とえき(腋)花芽利用の長果枝の果実の肥大と品質の関係に不明な面があり次年の課題として残された。 年による変異が大きい果樹の生産力の検討に際しては、同様な実験と調査の継続を年による繰り返しとみなしての研究が重要であり、2年目も同様な計画で調査を実施し、仮説的な状況の確認と細部への解析を行う。
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