研究概要 |
西村早生の渋果発生の原因として種子形成度合の低いことがあげられる. 1.種子形成の悪さを胚珠形成との関係でみると, 開花9, 10日前頃から胚のうの異常分裂や退化などの異常発育が増加した. その割合は年により25〜45%で, 夜間加温により半分に減らすことができた. 5月上旬に一果当り1〜2個の無能胚珠の発生となり, 種子形成の低さの本質的な原因であろう. 2.一果当り花粉量は禪寺丸が最も多く, 実生樹の通称"林柿"はこれとよく似た量であり, サエフジはその半分, 赤柿と西村早生は最も少なかった. 西村早生の雌芯内での人工授粉された花粉管の動きは25°Cでは15°Cより良好で, 林柿と赤柿花粉は10本前後と多く, 24時間後に胚珠まで達していたが, 西村早生は4本と少なく, 9.6mmの花柱の8mmと胚珠まで達しなかった. 3.西村早生に西村早生花粉を授粉6時間後に, さらに西村早生花粉を重複授粉すると, 12時間後に重複授粉した花柱内の花粉管数は単独授粉よりも多くなり, 花粉管の長さも単独授粉が8mmであったが, 重複授粉では9.6mmと胚珠まで達していた. 赤柿あるいは林柿を重複授粉すると, その結果はさらに顕著であった. 後から授粉された花粉は先に授粉された花粉に影響を受けることなく, 順調に発芽して花粉管が伸長し, 授精すると思われる. 4.ヘタ片枯死障害については両年とも材料が不十分で調査できなかった. 5.生物工学的手法を利用した優良品種作出のための基礎実験を実施した. 茎頂培養は1/2MS培地にゼアチン10^<-5>Mが最も良好であり, 新梢伸長停止後から花芽分化期までと2月下旬から萌芽期までに茎頂を採取培養するのが良い. シュートの発根にはIBA10^<-3>M, 30分処理が有効であった. 葯培養はNitsch培地に2.4-D10^<-6>Mとゼアチン10^<-6>Mが有効であった. 葉肉からのプロトプラスト單離のための酵素液組成, 処理条件などを明らかにしたが, 活性を増すためさらに検討が必要である.
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