研究概要 |
1.果皮中の糖含量の増加は果汁中の糖集積より遅れ、着色開始直前より急速に増加した。またN含量は着色の進行に伴い低下した。これらの傾向は着色期の早い品種ほど早期に始まり、着色期の早晩性と密接な関係がみられた。さらに、同一果実でも着色期の異なる部位間(果頂部,果梗部)で同様の糖、N含量の動向が認められた。 2.樹体温度を30-25゜C(昼-夜温)および20-15゜Cで管理した場合、低温区で着色が促進したが高温区では抑制された。この時の果皮内糖含量の変化は、低温区で著しく増加したのに対して高温区では糖集積が抑圧され、着色期の高温による着色不良は果皮への糖集積の低下が一因と思われる。 3.各種ホルモンの外生処理によると、ABA,エスレルによって着色が促進され、逆にGA処理で抑制された。また、果皮中の内生レベルでは、着色に伴い、GAの減少,ABAの活性増加が認められた。 4.果皮の培養実験によると,着色には糖、Nレベルが大きく関与しており、培地中の糖濃度が高いほど早期にクロロフィルの消失がみられた。また、Nレベルが低いほど着色が進行した。温度条件に関しては、15〜30゜Cの範囲ではいずれの培地組成においても高温区ほど早期にクロロフィルの消失が認められた。培地中のホルモンレベルの影響は、ABA、エスレル促進効果がみられ、GA、BAでは抑制効果がみられた。 これらのことから、温州ミカンの着色の進行には、Nレベルの低下および糖レベルの上昇が重要と考えられ、糖レベルについては約3%(対新鮮重)が着色開始の閾値と思われる。また、温度要因と着色の関係については、培養実験と樹上果実実験で傾向が異なり、今後検討を要する点である。
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