青果物の品温低下に伴うインピーダンスの絶対値変化を20℃から0℃までの範囲にわたって、一定周波数について測定した。いずれの青果物でも、インピーダンス値は温度低下につれて一定の割合で増加したが、低温耐性の弱いものではインピーダンス値の変化割合が特定の温度域で突然変化する傾向がみられた。その温度域は、従来から報告されている低温障害発生温度と、おおむね一致していた。しかし、このような傾向は、全ての青果物で安定して観察されたわけではなく、測定技術上に多くの問題点があるように思われた。なかでも、青果物に対する測定電極の接触状態が温度変化や蒸散の影響を受けて、測定期間中に変化することが最大の問題であると考えられた。 次に、LCZメータを用い、100Hzから20KHzまでの範囲にわたってインピーダンスと位相角を測定し、Cole-Cole円弧則を用いて細胞膜の容量成分と抵抗成分の温度特性を中心に、より詳細な解析を試みた。細胞膜容量は、温度低下とともに減少し、逆に細胞膜抵抗は増加することが明らかとなった。しかし、この場合も電極の接触状態の変化に由来する影響がデータ解析上に現われ、低温障害について論じるまでの安定した測定はできなかった。 そこで、理論的に電極の接触抵抗を消却できると考えられる4点式測定によるインピーダンス解析を行った。温度低下に伴う膜容量と膜抵抗の変化様相は、かなり安定して測定することが可能となり、いずれの膜成分も低温耐性の弱い青果物では、特定温度域で大きく変化する性質を持つ可能性を見出すことができた。単一細胞の測定については、現在続行中である。 以上のことから、青果物の種類ごとに低温障害発生温度をインピーダンス特性面から特定するまでには至らなかったが、少なくとも生体膜の容量成分と抵抗成分は、ともに明確な温度依存特性を持つことが明らかとなり、今後の方向性を十分示すことができた。
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