研究概要 |
青果物におけるCaの生理作用を明らかにするため本年度は、青果物の組織中におけるCa存在形態について調べた。すなわち、組織中のCaは水(F-【I】;カルシウムイオン,シュウ酸を除く有機酸塩),IN-Nacl(F-【II】;ペクチン,タンパク質に結合),2%酢酸(F-【III】;リン酸塩)及び5%塩酸(F-【IV】,シュウ酸塩)の各溶媒で順次抽出し、各画分のCa含量を原子吸光法で測定した。また、これらCaの画分が貯蔵に伴いどのように変動をするかを検討した。 1.青果物の種類によりCa存在形態に相違がみられた。ホウレンソウではF-【IV】,パセリ,カイワレダイコン,ウメではF-【I】が主なCaの存在形態であった。また、イチゴ,トマトではF-【I】,【II】の占める割合が大きく、バナナは4画分とも相当に含まれていた。 2.ホウレンソウのCaの存在形態は、葉の位置によって相違がみられ、内側の未熟葉ではF-【IV】と共にF-【II】,【III】の割合が比較的高く、葉齢の進行に伴ってF-【IV】が増加し、他の画分は減少した。 3.20℃貯蔵に伴うCaの存在形態の変化をみると、カイワレダイコンではほとんど変らなかったが、バナナやトマトでは貯蔵・追熟に伴いF-【I】が増加すすことがわかった。 4.F-【IV】画分の多いホウレンソウと少ないパセリについて1℃及び20℃貯蔵に伴うCaの存在形態と環元型アスコルビン酸(ASA)含量の変化を調べた。1℃貯蔵では、貯蔵期間を通じ両者のCaの存在形態には著しい変化はみられなかった。20℃貯蔵においては、ASAの急減に伴いパセリではF-【I】の低下、F-【IV】増大がみられたが、ホウレンソウではCaの存在形態にこのような変化はみられなかった。 以上のように、Caの存在形態及びその収穫後の変化の様式は、青果物の種類により著しく異なることがわかった。
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