研究概要 |
これまで生理活性を検索したクレロダン化合物の母核についた官能基はアルコールまたはエステル類でありカルボニル基を有するものについては構造活性相関の観点からは未検索であった。先にPiozziらにより単離構造決定されたteucrin【P_1】は6位がカルボニル基であると共にアセタール環を有する特異な5環性クレロダン化合物である。この物質の100%摂食阻害活性は80ppmとクレロジンの50ppmと比べても高いものであった。Teucrin【P_1】は補助金にて購入したHPLCによって精製した。この知見を元に現在進めている合成モデル化合物にカルボニル化合物を加えることとした。Teucrin【P_1】はPopaら,Mollovら,さらにPiozziらのX線解析によって構造確認されている。しかし、それらの【〔α〕_D】値は正負が逆転していることから両絶対配置の存在の可能性も示唆された。またB,E環がボート型立体配座をとることについても安定性の上から問題が提起された。Teucrin【P_1】の溶媒,無溶媒状態での熱平衡では何ら変化を示さなかった。アルコキシド等による処理でもB環の変位を与えなかった。しかし、LDA/HMPAではteucrin【P_1】の立体配座異性体を与えた。この異性体は補助金によるHPLCによって効率的に精製された。この異性体はNMR(360M【H_Z】)上もとの化合物と比べ極く僅かな差異を示すにすぎなかった。一方COスペクトルは両者で大きく異なり、異性体のそれは経時変化を示した。クロロホルム中14日間の経時測定でteucrin【P_1】に移行することを見い出した。この異性体はB環でなく、アセタール結合を有するE環が椅子型に変位したものであり、アセタール酸素と【Li^(0.4)】とのate complexを形成したことに原因が求められた。しかし、通常の条件下ではteucrin【P_1】から異性体への平衡は全くない。この立体配座異性体の構造はX線解析で明らかにされたが、結晶はteucrin【P_1】とのdisorderとして存在することが示された(J.Chem.Soc.Chem.Comm.;Bull.Chem.Soc.Japan)。
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