研究概要 |
昆虫の幼虫に対し摂食阻害活性を示すジテルペン化合物の立体配座と活性に関する問題及びニガウリ果実中のウリミバエ誘引物質に関する研究結果について. 1)生物活性の発現に生物の受容器の構造との関係から化合物の立体配座も一つの因子として関与するとの考えのもとにテウクリンP1の2つの安定な立体配座異性体について研究した. このものはB, E環共にボート型立体配座を有しているがLDA/THF-HMPA処理でE環が椅子型立体配座に変異したものであることがNOE実験から推測された. この事実はX線解析によって確証された. この立体配座異性体の安定さはCHCl_3中での経時的CDスペクトルの測定によって示された. 14日間の測定で2/3がテウクリンP1に変化した. この両異性体の摂食阻害活性はほぼ同程度であった. 当初期待したB環の立体配座の変異に伴う活性については問題が残された. 2)ニガウリからの雌ウリミバエに対し誘引活性を持つジリノレノイルグリセロールは野外試験では期待された結果を与えなかった. この問題の解決及び新たな活性物質の単離を試みた. 極性の高い分画からCue-Lue同様雄を誘引する物質としてメチルヒドロキシベンゾエートを単離した. さらに極性の高い分画より雌雄を誘引する化合物を単離した. このものは構造が複雑なため500MHzNMR, 2DNMRで確認した. その結果, 本物質は6-リノレノイルーβ-D-グルコピラノシナレー(1, 3′)-β-クレロステロールと決定した. 更に同分画からやはり雌雄を誘引する配糖体の1-O-(β-ガラクトピラノシル)-2, 3-ジーO-リノレノイルーX-グリセロールであった. 現在これらの配糖体化合物を大量合成しており, 完成次第先に明らかにした雌誘引物質のリノレイングリセロール化合物との共同作用を試験し, 実用化を目指すものである.
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