研究概要 |
北日本においてササの葉に寄生するミドリハダニPanonychus(Sasanychus)akitanus Eharaには、卵の形態・葉面利用部位・休眠態などから2型があると報告されていた(Gotoh,1986)。本研究では、この2型の形態的差異を見いだすことに努め、予想される2つの種の実在をつきとめることを目ざした。 この結果、いわゆる"無柄卵型"はakitanusとは異なる別種と判明した。Sasanychusが、狭義のPanonychusとは形態的にも生態的にも大いに異なるので、この機会にSasanychusを亜属から属に昇格させることにした。そしてミドリハダニ("有柄卵型")Sasanychus akitanusを再記載し、同時に"無柄卵型"をヒメミドリハダニSasanychus pusillus Ehara & Gotohの名のもとに記載した。両種の主要な差異は次のごとくである。 ヒメミドリハダニの雌は、ミドリハダニの雌と一見よく似ているが、胴背毛の長さが後者のそれよりも著しく短い(どの胴背毛についての比較でもP〈0.001(t-test)。ヒメミドリハダニの雌はミドリハダニの雌よりも体が小さいけれども、胴背毛【P_3】,H,【L_2】及び【L_3】の長さと体長の比は、いずれもヒメミドリハダニの方が明確に小さい(t-test,P〈0.001)。 さらに、ヒメミドリハダニの雄は、第2脚〓節が二重毛よりも基方に1通常毛と1ソレニジオンをもつことで特徴がある。(ミドリハダニの雄の第2脚〓節は、その部位に3通常毛と1ソレニジオンをもつ)。ヒメミドリハダニの雄交尾器の後部は波状をなさず、端末は円い。そして軸部の背縁に顕著な突起がある。これに対し、ミドリハダニの雄交尾器の後部は軽くS字状をなし、端末は截断形を呈し、軸部の背面は平滑である。
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