北日本においてササの葉に寄生するミドリハダニPanonychus(Sasanychus) akitanus Eharaには、卵の形態・葉面利用部位・休眠態などから2型があるとされていた(Gotoh、1986)。この2型の形態的差異をくわしく調べた結果、いわゆる"無柄卵型"は、akitanusとは別種であることがわかった。Sasanychusが、狭義のPanonychusとは形態的にも生態的にも著しく異なるので、Sasanychusを亜属から属に昇格させた。そしてミドリハダニ("有柄卵型")Sasanychus akitanusを再記載し、同時に"無柄卵型"をヒメミドリハダニSasanychus pusillus Ehara et Gotohの名のもとに新種として記載した。両種は、胴背毛の長さが著しく異なるほか、雄の脚の毛の配列や雄交尾器の形状でも差異がある。 北日本でカエデの葉に寄生するEotetranychusのハダニ2種を新種として記載した。ヒメカエデハダニE.spectabilis EharaとオオカエデハダニE.dissectus Eharaがこれで、ともに赤色種である。Eotetranychusに属する日本産既知13種の夏型雌は、スミスハダニE.smithi Pritchard et Baker(赤色)を除き、淡黄〜淡黄緑色であるから、この2種は色彩の点で少数派に属する。 ヒメカエデハダニとオオカエデハダニは色彩が似ていても、他の点ではかなり相違する。ともにカエデに寄生するため、両種の識別は重要である。雌の皮膚条線は、ヒメカエデハダニでは内仙毛の後方で逆V字状に走るが、オオカエデハダニではすべて横走する。雄交尾器は、前種では後方でほぼ直角に下降するが、後者では直走する。 東南アジアのハダニ科、ツメダニ科、カブリダニ科なども研究された。
|