1.エンバク冠さび菌不親和性レースを接種した勝冠1号葉よりリポキシゲナーゼ(LOX)を抽出し単離精製を試みた。LOXは抽出液に硫安を添加すると、0.5-0.8飽和の沈殿蛋白質画分中に存在した。同画分をDEAE-SepharoseCL-6Bカラムで分画すると、抵抗反応時特異的に出現するアイソザイム(LOX-1)はカラムの通過部分にきわめて微量検出された。同活性部をさらにCM-SepharoseCL-6Bカラムで分画すると、活性部は坦体に吸着されるが、0.04MのNaClによって溶出された。活性部を濃縮してポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動でLOXのアイソザイムを調べると、pH83および同4.3の両条件下での泳動とも1本のバンドが検出された。しかし、等電点ゲル電気泳動によってpH3-10の勾配を作ってバンド数を確認すると、pH5.15付近に1本のみしか検出されなかった。ゲルを染色して他の蛋白バンドの有無を調べても活性部以外には蛋白質は含まれていないようであった。純化したLOX-1とオレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸を反応させると、いずれともよく反応した。また、LOX-1は60℃、15分の温度処理によって約50%が失活し、70℃、15分の処理で完全に失活した。さらに、LOX-1の活性は5mMサリチルヒドロキサム酸により60%が、2.5mMプロピル没食子酸により95%が阻害された。 2.LOXの粗酵素液とリノール酸を反応後、生成物の抗菌性を調べると、不親和性菌感染葉のLOXを用いた時にのみ強い活性を認めた。同生成物をTLCで展開すると、Rf0.5付近に抗菌スポットとして検出できた。同スポットの諸性質はエンバク冠さび菌感染葉に生成される中性エーテル画分中の抗菌性物質ときわめて類似していた。
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