研究概要 |
1.リポキシゲナーゼ: エンバク冠さび菌不親和レース226を接種した勝冠1号よりリポキシゲナーゼ(LOX)を抽出し純化を試みた. LOXは可溶性抽出液中の0.5-0.8飽和硫安沈澱物中に存在した. 同画分をDEAE-SepharoseCL-6B及びCM-SepharoseCL-6Bカラムクロマトグラフィーで精製した. 等電点ゲル電気泳動法によってアイリザイムバンドを調べると, pH5.1付近に1本のみ検出された. 精製した酵素はオレイン酸, リノール酸, リノレン酸及びアラキドン酸と強く反応した. 同酵素は60°C, 15分の温度処理により約40%が失活し, 70°C, 15分の処理によって完全に失活した. また, 阻害剤のサリチルヒドロキサム酸などで強く阻害されたが, フェニドンなどによっては阻害されなかった. 精製した酵素を兎の皮下及び筋肉内に注射し, 抗体を作製した. ゲル内二重拡散法により抗原抗体反応を行うと, 2-3日後に一本の沈降線が出現した. 2.抗菌性物質: 不親和性レース接種葉の中性エーテル画分中にはファイトアレキシン・アベナルミンとは異なる未知の抗菌性物質が検出された. 同画分をTLC(クロロホルム:メタノール)上で展開すると, Rf0.5付近に単一の抗菌スポットが確認された. 同スポットは, ローダミン6G及び水と反応し, 疎外性の複合脂質系物質と推定された. 健全葉から抽出した全脂質を各種有機溶媒によって分画し, LOXと反応させると, クロロホルムーメタノール及びクロロホルムーアセトン画分の生成物中に抗菌性が認められた. 生成物のTLC上の性質は接種葉中の抗菌性物質と酷似していた. 本研究によって, 抵抗反応時に特異的LOXアイソザイムが出現し, 抗菌性物質の生成に関与すると推定された.
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