研究概要 |
マツ類の樹皮下穿孔虫のうち, 西日本に広く分布する害虫キイロコキクイムシを供試し, そのコミュニケーションの各信号系を解析し, ひいてはそれを利用することによって本害虫の管理を目指して, 実験室内及び野外で研究及び調査を行った結果, 以下の成果を得た. 1.パイオニア雌は地上4m前後の高度を飛翔しながら, アカマツの健全木・衰弱木を問わずにランダム着陸をし, 樹脂圧のない衰弱木に対して穿孔を開始する. 2.雄が翅鞘と腹部背板とをこすって発する摩擦音は穿孔中のパイオニア雌に対する到着告知信号であって, 平均64ミリ秒間隔で平均19個のパルスからなる連続チャープである. また, 頭頂と前胸背による摩擦音はパルス間隔が約200ミリ秒の間欠音である. 3.雌雄は飛翔にあたって正の走光性を示し, 25〜34°Cで風上にあるアカマツ及び処女雌穿孔餌木(集合フェロモン放出中)に対して定位し, 約50cmの至近距離内ではそれらに向かって直進飛行をする. 4.広い空間では, フェロモン源の存否以上に光刺激の有無が飛翔行動を左右する. 5.天敵としての捕食寄生中ハットリキクイコマユバチは, 寄主穿孔木の樹表をドラミング歩行し, 第2齢幼虫が穿孔しているときにはその直上近くで旋回行動をとった後に産卵行動に移る. その際, 幼虫の摂食音が寄生蜂の寄主探索行動の手掛りになっている.
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