1.高塩類条件によって誘導されるストレスタンパク質の単離と精製 数種類の栽培作物を高塩類条件によって栽培した結果から、比較的耐塩性の高い作物として大麦、弱い作物として水稲を選び、ストレスタンパク質誘導の実験に供した。0.8%の食塩を含む水耕液によって両者を栽培し、3週間にわたってストレスを加えた後、破砕抽出し、10%トリクロル酢酸で沈澱させたタンパク質を、二次元電気泳動法によって展開し泳動パターンを比較した。その結果、ストレス大麦根には、正常区や、ストレス水稲区には存在しないタンパク質が誘導されることが判明した。分子量27000、等電点7と、分子量27000、等電点6、7の二種類である。これらのタンパク質は現在のところ二次元電気泳動法以外に検出法がないため、ゲルから直接抽出する方法を用いて単離を試みた。その結果、両タンパク質とも、二次元電動ゲル上で、単一のスポットを示すまでに分離された。現在、アミノ酸配列を決定中である。 2.プロティンA金法による免疫細胞化学法(免疫電顕法)の検討 塩類ストレス誘導タンパク質の単離精製と並行して、プロテインA金法による免疫電顕法の、植物組織における適用について検討するために、植物のタンパク質としては最も存在量の多い、リブロースジホスフェイトカルボキシラーゼを用いて細胞内の局在性を観察した。この方法のための試料の固定包埋法としては、数種類の組み合せを検討した結果、グルタールアルデヒド固定、LowicrylK4M樹胞包埋が最も良好であった。この酵素の抗体をウサギにより調製し、プロティンA金を用いて超薄切片法で抗原の位置すなわち本酵素の局在位置を固定した。その結果、ホウレンソウ葉の葉緑体内部に存在する結晶様封入体が本酵素であるとする従来の知見には疑問があることが示された。
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