研究概要 |
日本全国に分布している赤黄色土を共通の基準により比較, 検討することを本研究の目的としているが, 本年度は北海道の赤色土を採取し, 前年度採取した東海・北陸地方の赤黄色土とあわせて実験に供した. 全化学分析等による風化度指数(WI)の算出によると段丘礫層を母材とするものはほとんどWIが0以上であり, 共通して風化が進んだ土壌であることが明らかとなった. これらには赤色, 黄色を呈するもの両者が含まれている. 従来, 赤色土は地質時代の温暖期に生成した古土壌と解釈されてきたが, 黄色土については解釈が様々であり, 赤色風化に付随した"黄色風化", あるいは段丘上に新たに堆積した母材から生成した未風化な土壌という相反した見解が存在していた. 土壌分布の複雑性を考えると黄色を呈する土壌の中には風化の進んだものと未風化なものが混在して含まれることが予想され, それらを現場, あるいは土壌分類の段階でどう識別していくかが問題となる. WIがその一つの基準となり得ることが解析を通じて明らかとなった. 各土壌断面内での粘土鉱物組成の変化を調べた結果, 礫層とその上部の黄色土層では前者がカオリン鉱物を主体とするのに対し後者はクロライト化したバーミキュライトが主体を占め, 両者は材料を異にしていることが明確となった. この傾向は近畿地方の高位段丘土壌で指摘されていたことであるが全国的な傾向であることが判明した. 両者の境界付近には22000年前の火山灰が混入している断面がみられたことを考慮に入れると, いわゆる黄色土層は年代的には非常に若い堆積物であることが強く示唆され, 大陸からのレスの飛来, 火山灰の混入などが考えられる. これらの知見は粘土鉱物の起源, 風化様式の解明に大きな手がかりを与えるにとどまらず, 肥沃度評価, 熱帯・亜熱帯の赤黄色土と比較する上での大きな相異点となると考えられる.
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