研究概要 |
マウスフレンド細胞再分化誘導反応は2つの反応(DNA sideとmembraneside)の組み合わせで起こることを我々はすでに明らかにし、更にこれらの反応をになう蛋白性因子(DIF-【I】,DIF-【II】)の存在を明らかにした。本年度は各種分化誘導剤で処理した細胞抽出液よりこの両因子を精製することに成功し、かなり精製度のすすんだ標品を調製することができた。しかし、末端ペプチド分析をする純度には至っておらず、従ってこれらを抗原とし、抗体を作製することを行なった。このDIF-【I】、DIF-【II】は共にマウスの培養細胞より得たものであり、マウス、ラットに対しての抗原性は低く力価の高い抗体は得られなかったので、マウス膵臓細胞を用いた試験管内免疫法を確立しこれによりDIF-【I】、DIF-【II】に対するモノクローナル抗体を得ようとした。得られたハイブリドーマ466株のうち6株がDIF-【I】に対する中和活性を示し、又DIF-【II】に対しては2株が中和活性を示していた。しかし、これが果してDIF-【I】.DIF-【II】と特異的に反応する抗体を産生しているかどうかは更なる検討を要する。又、DIF-【I】について以下の実験事実が明らかとなったDIF-【I】をDNA topoisomerase【I】と共存させるとDNA topoisomerase【I】活性が上昇するということである。DNA topoisomerase【I】はTF【II】(transcriptionfactor【II】)と同一であるという報告も出されており、DIF-【I】が広範囲に存在すること(マウス肝臓、胎児、膵臓組織)と考えあわせると新たな遺伝子発現の場においての役割を示唆する生化学的な活性として注目されるものである。又組織特異的な存在を示すDIF-【II】はDIF-【I】存在下、新たにDIF-【III】と呼べる活性因子を生成する。このDIF-【III】は、他の2因子とカラムクロマト上での挙動が異なり、DIF-【I】、【II】の複合体が形成されたものと考えられ、現在、その点について検討中である。
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