成熟した血液細胞の供給は、未分化な細胞の分化増殖によって達成される。赤血球系細胞の分化にはバースト形成促進因子(BPA)およびエリスロポエチン(EP)と呼ばれる二つの蛋白性因子が関与する。EPは分化の後期過程に作用する因子であり、その単離や遺伝子のクローニングが完了している。BPAは赤血球分化の初期過程に作用する因子であり、その性状は明らかになっていない。本研究の目的は、BPAを単離し、その作用を明らかにすることであり、以下の成果を得た。 1.BPAを貧血患者尿より10万倍に精製した。 2.単離したEPおよびBPAを使用し、ヒト血流中に存在するBFU-E(BPAの標的細胞)に対する作用を、メチルセルローズ半固型培地中で形成されるコロニーを観察することにより研究した。EPの添加のみでもコロニーが形成されるが、BPAを添加するとコロニーの数を増加させるだけでなく、コロニー形成に必要なEPの量を著しく低下させた。BPAのみの添加ではコロニーは形成されないが、ヘモグロビンを含まない小さなコロニーが形成された。BPAを添加しておくと、EPの添加を6日遅らせてもコロニーの数は減少しなかった。ところがBPAが存在しない場合には、EPを最初に添加しておかないと、BFU-Eはすぐさま死ぬ。すなわちBFU-EにはEPに応答する集団とEPに応答しないより未分化な集団があり、BPAは両集団に作用しうることを示している。 3.BPAはEPのみによって形成されるコロニーよりもより大きなコロニーを形成する。またコロニー当りのヘモグロビンの量を増加させる。この増加はコロニー当りの細胞の増加のみによっては説明することが出来ず、細胞当りのヘモグロビンの増加が寄与していることを証明した。
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