研究概要 |
卵白タンパク質の主成分の一つであるコンアルブミンは, トリ輸卵管においてステロンドホルモンの制御の下に, 多量に合成・分泌される. この合成誘導は, エストロジェンが輸卵管細胞内に透過してレセプターと複合体を形成したのち, 細胞核内の遺伝子クロマチンに結合し, コンアルブミン遺伝子発現の引き金となる. 本研究では, この遺伝子発現における, クロマチン構成タンパク質であるヒストンのアセチル化の役割を検討すると共に, コンアルブミン高次構造形成レベルでのホルモン作用の効果を検討し, コンアルブミン遺伝子発現調節におけるホルモンレセプター機能の全体像を調べた. ニワハリヒナにエストロジェンを投与したところ, 輸卵管細胞核内でのヒストンのアセチル化活性が顕著に上昇した. そこで, エストロジェン投与したヒナから輸卵管を分離し, 〔3H〕酢酸ソーダとインキュベートしてヒストンをアセチル化した. 組織よりクロマチンを単離し, ヒドロキシルアパタイトカラムに吸着後, 食塩濃度を上昇させ溶出したところ, 高度にアセチル化を受けたヒストンは, バルクのヒストンに比べて低い食塩濃度で溶出することが分った. 即ち, 高アセチル化により, ヒストンとDNAの結合力が減少することが明らかとなった. これらのデータは, ホルモンレセプターのクロマチンへの結合と, これに続くヒストンアセチル化が, 遺伝子発現に重要な役割を果たすことを強く示唆する. 一方, コンアルブミン分子内のS-S架橋形成に対するホルモン作用の効果を検討するため, 輸卵管で生合成されたコンアルブミン分子S-Sの分析法を新たに開発した. この方法を使って解析したところ, エストロジェン作用を受けた輸卵管細胞内では, 極めて能率よくコンアルブミン分子S-Sが形成されることを認めた.
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