研究概要 |
1.フィターゼに関する研究については、予定した研究計画をほぼ達成できた。フィターゼの分解産物がイノシトール-三リン酸であったことから、情報伝達物質として注目されているイノシトール1,4,5-三リン酸との関わりに興味があったが、スェーデンのPerstorp Carbotec社の分析によって、イノシトール1,2,3-三リン酸であることが明らかになった。ガマ花粉のフィチン酸の存在は、ダウェックスカラムクロマトグラフィによって証明されたが、イノシトール-五リン酸,イノシトール-四リン酸などの中間代謝産物は検出されなかった。発芽における挙動を調べたところ、フィチン酸は発芽1時間後で約30%,3時間後には80%以上が失われたが、イノシトール-三リン酸の蓄積は認められなかった。 培養によるフィターゼ活性とホスファターゼ活性をpH5.0とpH8.0で調べたところ、両pHでのホスファターゼ活性と、pH8.0でのフィターゼ活性はいずれも培養30分でほぼ最高値を示し、時間経過による活性上昇はみられなかった。しかし、pH5.0のフィターゼ活性は培養時間の経過とともに上昇することから、我々が報告した以外のフィチン酸特異的フィターゼが、de novo合成されている可能性がある。 2.カルモジュリンについては、マツ花粉からHPLCを用いたイオン交換クロマトグラフィ,N-1ナフチルエチレンジアミンを結合させたセファロース6Bによるアフィニティクロマトグラフィ,セファデックスG100によるゲル3過による精製を試みた。その結果、ポリアクリルアミドによる電気泳動で均一であり、かつカルモジュリン特有の【Ca^(2+)】感受性を示すタンパク質を得た。ガマ,マツ花粉ともにカルモジュリンの存在が明らかになったので、植物雄性配偶体におけるカルモジュリン受容タンパク質とその役割について解明を進める予定である。
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