1.当研究室で単離されたClostridium thermocellulovorumを70℃で培養後、その培養液上清に最終濃度が70%になる様にエタノールを加えた。これを一晩4℃で静置、沈澱画分を緩衝液に溶かして粗酵素液とした。新聞紙および濾紙を適当に希釈したこの液に一晩70℃で浸すと完全に崩壊した。 2.この粗酵液中に、75〜80℃で強力に作用するアビセラーゼ、3紙分解活性、CMCアーゼ、TNP-CMCアーゼ、セロビアーゼ、キシラナーゼおよびマンナナーゼの活性を見出した。 3.培養液上清からセルラーゼを精製した。本菌のセルラーゼは、精製過程で多成分に分かれたが、そのうちの主要成分のうちの一つを、CM-トヨパール650S、DEAE-トヨパール650S、トヨパールHW-60Sカラムクロマトグラフィーを用いて電気泳動的に単一なまでに精製した。 4.精製セルラーゼは、分子量約20万の巨大なシングルペプチドであり、最適反応温度約90℃、最適pH6〜8、pH6以上では極めて安定であった。熱安定性も、培養温度である70℃では全く安定、80℃・一時間の熱処理で90%以上90℃・一時間でも70%の活性が残存し、期待通り極めて高いものであった。 5.今回精製されたセルラーゼ単独では結晶性セルロースに強く作用することはできなかった。また精製酵素は、その反応生成物のパターン(重合度)から、エンド型のグルカナーゼと考えられた。 6.本菌は、セルロース、でんぷん、キシラン、ペクチンその他多くの糖類を良く資化し、それらからの主発酵生産物は乳酸であった。すなわち本菌は従来報告のなかった乳酸発酵型のクロストリディウムであり、その基質特異性の広いこと、生育の速いことから、耐熱性酵素の供給源としてだけでなく、バイオマスからの乳酸生産にも適していると考えられた。
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