最近我々の分離した好気性・非病原性の放線菌の1株StreptomycesC-51の生産するコラゲナーゼは、非特異的蛋白分解酵素の混在が少なく精製も比較的容易である。そこで近年その需要が増大している生化学(細胞分散剤等)および臨床(椎間板ヘルニアの治療等)領域で利用するための基礎的研究とし、高純度・定品質のコラゲナーゼを多量に得ることを検討すると共に、酵素化学的諸性質をさらに解明することを目的としている。 本年度の成果 1.酵素化学的諸性質の検討-本菌は抗原特異性、アミノ酸組成、種々の酵素化学的諸性質は一致または類似するが、分子量、基質特異性および電気泳動的性質は異なる2種のコラゲナーゼ(【I】および【II】)を生産した。これら2種のコラゲナーゼの関連性を検討した結果、天然基質により高い比活性を示す主成分であるコラゲナーゼ【I】が菌体より溶出されたのち、培養液中でコラゲナーゼ【II】に修飾されることが明かになった。 2.各種臓器および組織からの細胞分離・分散活性の比較-本菌の阻コラゲナーゼ標品(硫安塩析物)とClostridiumコラゲナーゼ(Sigma社製タイプ【II】S)の間でこれらの活性を比較した結果、本標品は一般的に細胞分散が困難とされるマウス由来のLevis肺ガン、ぼうこうガン、ヒト由来の乳ガン、肺ガンなどのシュヨウ組織に対して特に高い分散性と生存率を示した。 3.臨床利用のための高純度標品の量産-MonoQ HR5/5カラムを用いることによりコラゲナーゼ【I】と【II】を分離・精製することができた。また培養条件、変異株の分離により、コラゲナーゼ【I】のみを生成することも現在検討中である。
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