研究概要 |
1.ホルムアルデヒドジスムターゼ(FDM)の精製と性質. Pseudomonas putida F61よりFDMを大量にしかも結晶状に単離する方法を確立した. 本酵素の分子量は18万で, 4つの同一分子量サブユニットから成り, サブユニットあたり1分子のNAD(H)と2原子の亜鉛を含んでいた. 2.FDMの反応機構, 結晶酵素標品を用いた酵素反応速度論の検討より, 本酵素とNAD(H)との結合は非共有結合的ではあるものの極めて強く, 外から加えたNAD(H)およびそのアナログとは交換しない. またアルデヒドの不均化では, 酸化と還元のどちらの側からも反応が開始し, 酵素に結合した補酵素はNAD:NADHの比が1:1に近ずいた. 本酵素の基質特異性および各々の基質に対する親和力は, 半反応(酸化反応)だけで見るかぎり, 従来のNAD関与のアルコール脱水素酵素と類似であるが, 反応全体で考えると, アルコール:アルデヒド酸化還元酵素(EC1.1.99.X)と分類される新型酵素である. 3.FDMの固定化とメタノールからのギ酸生成. FDMはウレタンプレポリマーで包摂固定化することによって安定性が向上した. また, メタノール資化性酵母Hanse polymorphaのアルコールオキシダーゼとカタラーゼとを同時に固定化することによってメタノールからギ酸への変換に利用できた. さらに, P.putideとH.polymorphaの菌体を固定化することによって触媒能の安定性えを著しく向上させることができた. この生体触媒系はC1からC4の一級アルコルから相当する酸への変換に利用できる. 4.NAD結合型ギ酸脱水素酵素の利用. ギ酸脱水素酵素に化学的手法でスペーサーを介してNADを結合させたものは, 各種の脱水素酵素と共役し, その結合した. NADを共通の補酵素として利用した. そのうちロイシン脱水素酵素の場合は, ギ酸, 2-オキソイソカプロン酸, アンモニア, ギ酸から定量的にロイシンを合成することができた.
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