研究概要 |
既往のすべてのエンドグルカナーゼは、微結晶構造をもつ天然セルロースに対し、分解能及び吸着能を示さない。本研究は、α-アミラーゼの生澱澱分解機構に関する知見に基づき、アビセル分解能及び同吸着能を有するエンドグルカナーゼの存在を予見して、自然界から多数のセルラーゼ産生菌を分離検索し、プロテアーゼ低産生変異株を育成して、強力なアビセル崩壊能を有する親規なエンドグルカナーゼを見出し、その特性を決定し、糸状菌エンドグルカナーゼがアビセル崩壊能及び同吸着能の有無によって、【C_1】及びCxに二大別されることを明らかにし、次いで強力な天然セルロース分解能をもつ酵素製剤の調製に及んだものである。 1.高温糸状菌Humicola grisea var.thermoidea YH-78のプロテアーゼ低産生変異株No.140は、アビセル崩壊能を示すが還元糖を生成しない、分子量128,000のエンドグルカナーゼ【C_1】を産生した。一方、同菌株のプロテアーゼ高産生変異株No.191は、アビセル崩壊能及び同吸着能を示さない分子量63,000の従来型エンドグルカナーゼCxを産生した。両酵素ともCMCase活性を示した。つまり、糸状菌エンドグルカナーゼは【C_1】とCxに二大別された。 2.Geotrichum sp.は、著量のエンドグルカナーゼ【C_1】(分子量117,000)と少量のCx(分子量57,000)を産生した。【C_1】はプロテアーゼの作用によりアビセル吸着能を有する低分子のグリコペプチドを遊離して、Cxへと変換した。つまり、【C_1】には基質親和部位の存在が推定された。この親和部位の有無によって、エンドグルカナーゼ及びセロビオヒドラーゼをそれぞれ二つのグループに分ける新分類体系を呈示した。 3.エンドグルカナーゼ【C_1】とセロビオヒドラーゼ【C_1】を混合して、強力な酵素製剤を調製し、好結果を得た。
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