研究概要 |
植物病原菌の生産する植物毒素の研究は近年の分光学的機器の高度な発達により、除々に解明されているが、更に進展をはかるためには合成化学的手法が不可欠となってくる。即ち立体化学を含めた構造の確立、生物活性一構造相関、假想生合成中間体の合成、微量毒素の供給の面で、合成化学の果すべき役割は大きい。これらの諸問題解決のため、ベーテノン関連化合物につき、次の研究を行った。 1.ベーテノン類はテンサイじゃのめ病菌の生産する毒素群で、ベーテノンCが最も高い毒性を示す。すでに構造研究の過程でベーテノンB→C→Aの変換が完了しているので、本合成ではベーテノンBを標的化合物とした。合成計画は想定生合成経路にのっとり、トリエンの分子内Diels-Alder反応を鍵段階とした。トリエンはセグメントA,B,Cに分けた。ヤグメントAはEvans法による不斉アルキル化反応を用いて合成した。セグメントBは不斉エポキシ化を経る立体選択的手法を用いた。セグメントCは既知化合物を用いた。これら各セグメントの縮合により得られるトリエンは生合成研究の重要中間体なり得るものである。 2.デイプロデイアトキシンは罹病トウモロコシから得られているマイコトキシンの一種で、ベーテノン類と類似の炭素骨格を有している。この立体化学は不明であるので、これを明らかにすることと、生理活性試験に供し得る方法で全合成を行った。まず鍵中間体トリエノンの合成をD-グルコースより合成し、このトリエノンの分子内Diels-Alder反応を経て、ディプロデイアトキシンを合成した。この合成により、全立体構造が明らかとなった。さらに有効な合成法を開発するため、酵素法や光学分割を経る、より短縮した経路による合成を行っている。
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