1.カイコ前蛹より抽出・部分精製したキチナーゼを用い、γ-キチンレッドの分解を指標として、数多くの放線菌代謝産物中に、キチナーゼ阻害物質を検索した結果、スドレプトマイセスに属する2菌株の培養菌体に強力なキチナーゼ阻害物質が存在することを見い出した。この2種の菌を大量に培養し、活性炭クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどによって精製した。 2.単離されたキチナーゼ阻害物質2種のうち1種はアロサミジンと命名し、その構造と、分解反応、NMRスペクトル等によって研究した結果、それは、N-アセチルアロサミン2分子と、アロサミゾリンと名づけたサイクリトルから成る(図1)と決定した。さらに残りの1種はアロサミジンのメチル化体であり(図1)メチルアロサミジンと命名した。 3.アロサミジンは、γ-キチンレッドを用いる検定系では、2μg/mlの濃度でキチナーゼの活性を完全に抑制した。また、ヨトウ幼虫に注射投与すると、4〜8μgの量で、幼虫の脱皮・変態を阻害する活性を有することが判明した。 4.精製したカイコのキチナーゼ、および放線菌のキチナーゼ、植物のキチナーゼに対して、詳細にその結果を調べたところ、アロサミジンは、カイコのキチナーゼに特異的に作用する阻害物質であり、植物のキチナーゼにはまったく効果がなかった。また放線菌のキチナーゼに対してもその効果は弱かった。
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