研究概要 |
尿素処理後各時期の放射線滅菌森林土壌(F層)にAmblyosporium botrytis,Ascobolus denudatus,Lyophyllum tylicolor,Corinns ohlyctidosporus(以上、遷移前期のアンモニア菌)とHebeloma vinosophyllum(遷移後期のアンモニア菌)の栄養菌系を単独および混合(2員および5員)培養して、遷移前期の各アンモニア菌と遷移後期のアンモニア菌の相互作用を生殖器官形成レベルで調査した。 2員培養--A.botrytis,A.denudatus,I.tylicolorはいずれも全供試土壌でH.vinosophyllumの子実体形成を抑制した。この3菌によるH.vinosophyllumの子実体形成の抑制は、尿素施与後3ケ月以内の土壌(野外遷移前期のアンモニア菌の発生が終了するまでの期間の土壌)では著しく、施与後3ケ月以後の土壌(野外で遷移後期のアンモニア菌が発生を開始する時期以後の土壌)では緩和された。C.phlyctidosporusは全供試土壌でH.vinosophyllumの子実体形成を完全に阻害した。一方、H.vinosophyllumは、A.denudatusの子実体の成熟を抑制、C.phlyctidosporusの子実体形成を抑制、L.tylicolorの子実体形成を保進したが、A.botrytisの胞子形成には影響を与えなかった。 5員培養--尿素施与2週間後の土壌では、L.tylicolorとC.phlyctidosporusのみが発生した。尿素施与後3週間目以後の土壌では遷移前期の供試4菌は野外での遷移順序に対応する順序で生殖器官を形成したが、H.vinosophylumは野外で遷移前期の菌が発生を開始する直前の土壌と遷移後期の菌が発生を開始した時期の土壌でのみ子実体を形成したにすぎなかった。 以上の知見から、アンモニア菌の発生・遷移に、アンモニア菌間の相互作用が重要な役割を演じていることが判明した。 供試森林土壌中の【NO_3】-N量は尿素無処理区で【10^(-1)】〜【10^(-2)】mg-N/g乾土、尿素処理区で10〜【10^(-1)】mg-N/g乾土であった。尿素処理後2〜4週間の土壌は最も高い【NO_3】-N含量を示した。
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