研究概要 |
尿素処理後各時期のγ線滅菌森林土壌にAmplyosporium botrytis,Ascobolus denudatus, Lyophyllum tylicolor, Coprihus phlyctidosporus(以上, 遷移前期のアンモニア菌)とHebeloma vinosophyllum(遷移後期のアンモニア菌)の胞子あるいは栄養菌糸を単独および混合接種・培養して, 各供試土壌における供試菌間の相互作用とその時の土壌化学条件を調査した. この結果から, 各アンモニア菌の発生・遷移に対するアンモニア菌間の相互作用の影響を推察した. 供試菌は, 全ての尿素処理土壌での培養で増殖した. H.vinosophyllumの栄養成長に適する土壌は, 尿素施与後1.5ヶ月を境としてL〜F層からHA層に置き変った. H.vinosophyllumの子実体形成量は, 尿素施与後2.5ヶ月以降の土壌で急増したが, 尿素無処理土壌では極めて低い値を示した. 本菌の混合培養での子実体形成は, L〜F層では供試4菌によって, HA層ではA.botrytisを除く供試3菌によって抑制された. これらの菌によるH.vinosophyllumの子実体形成の抑制率は, 全供試土壌において, L〜F層の方が高い値を示した. HA層の方がL〜F層よりNH_4-N量, 有機態窒素量, pHともに高い値を示した. 以上から, 自然界では, H.vinosophyllumは他のアンモニア菌との競争によって忌避的にHA層で増殖を始め, しだいに競争力を増大することによって定着するものと推察した. H.vinosophyllumの子実体形成は, 遷移前期のアンモニア菌より低pH, 低窒素条件で誘起されると推察されるが, 他のアンモニア菌との競争力を決定する土壌要因をみいだすに到らなかった. 胞子を接種源とする単独培養では, 全供試尿素処理土壌で, 供試5菌の発芽が確認された. 胞子を接種源とした培養では, L.tylicolorを除き, 栄養菌糸が接種源とした培養より子実体形成の時期が遅れ, 野外の発生時期での対応性も低かった. 以上から, 野外におけるアンモニア菌の潜在形態の主体は栄養菌糸体と推察した.
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