乾性遷移の先駆樹種であるオオバヤシャブシ幼齢群落S(滋賀県土山町)及びヒメヤシャブシ低木群落P(同県野洲町)について、地上部の純生産量、花芽から種子に至る各段階での生殖器官各部の個数の推移を解析した。両群落では前年度と同じく9月下旬に伐木調査、毎木調査及び枯死量調査を行い、またリターフォール調査と花粉生産量調査による資料を用いて1988年の物質収支表を作成した。Sの地上部純生産量は19.4t/ha・yr、Pのそれは8.52t/ha・yrと推定した。Sは前年度の値に一致したが、Pの方は約半分に減少した。このPはアロメトリーの決定に問題を残しているので、結局2か年平均が12t/ha・yrと考えた。これらの値は有機質を欠く未熟土にある群落が光合成により固定したものとしては驚愕に価する。生殖器官生産量は0.6t/ha・yr程度で、地上部全体の5%に相当し、さらに種子は0.05%程度であった。土地条件の極端に悪い所に成立する群落において同化物質から再生産部分への配分が少いことは、植生遷移で生駆種となるのに有利と判断した。Sの花粉生産量は212.5kg/ha・yrで、花粉のない開花雄花序248.1kg/ha・yrを加え、さらに未開花のものを加算すると雄性部分生産量は562.1kg/ha・yrになった。Pでは花粉が148kg/ha・yrで雄性は257kg/ha・yrとなる。空中に飛散した花粉粒数はSが1.46×10^<13>個/ha・yr、Pが2.87×10^<13>であった。これらの値は前年に比べて大きな違いがなかった。雌性部分に対する雄性部分の比を調べると両樹種に違いがあった。Sは雄花芽が4倍、開花時には10倍に広がり、1球果に対する花粉粒が1億個、1種子については50万個の花粉を必要とした。またPは雄花と雌花芽の個数は等しく、10%程度の落果があった。PではSに比べて約半分の花粉粒で種子1個を形成していた。
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