研究概要 |
天然セルロースの結晶格子定数やX線回折強度に、セルロースの起源による差異を見出したので、代表的な起源である木材からアカマツ,カラマツの針葉樹材2種とケヤキ,レッドメランチの広葉樹材2種を選び、酸加水分解に伴う結晶構造の変化を解析することにより、木材セルロースの結晶構造を検討した。 1.未処理の段階で、結晶格子定数のうち軸率には試料間の差は無いが、軸角γには差があり、針葉樹材の方が約1.5度大きかった。X線回折強度比【R_1】=【I_(002)】/【I_(004)】は針葉樹材の方が小さく、【R_2】=(【I_(1(~11)0)】+【I_(110)】)/【I_(200)】は逆に広葉樹材の方が小さく、両グループ間に構造の違いがあることを示し 2.酸加水分解によって以下の変化が見られた。 (1)軸角γは針葉樹材で小さくなり、広葉樹材で変化が小さかった。 (2)回折強度比【R_1】は針葉樹材,広葉樹材ともに小さくなったが、その程度は広葉樹の方が著しく、したがって両者の差は減少した。 (3)回折強度【R_2】は針葉樹では変化しなかったが、広葉樹材では増加した。以上の結果から、酸加水分解処理によって、針葉樹材と広葉樹の差異が少くなり、元素存在した差異は加水分解によって除かれるようなもの、例えば、非晶セルロースやヘミセルロースによって生じていたものであろう。 3.未処理ならびに加水分解処理材のX線回折データを満足するセルロースのコンホメーション、とくにメチロール基の酸素の位置ならびにセルロース鎖のパッキングエネルギーを計算し、以下の結果を得た。 (1)メチロール基の酸素はtgの位置であろう。 (2)加水分解処理によって、セルロース結晶の構造は針葉樹材,広葉樹とが同一のモデルに近づいた。したがって、木材セルロース結晶は元来1つであろう。
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