研究概要 |
ブリ及びアユについて餌生物エキス成分の味覚器に対する刺激効果と飼料への添加による摂餌促進効果を並行して調べた結果、以下のことが明らかになった。 [ブリ]1)味覚器はイカ(スルメイカ,アオリイカ)及び魚(マアジ,ブリ)の各組織(皮膚,筋肉,肝臓,腸等)の水抽出液に対し高い感度を示し、何れの動物種においても筋肉抽出液に最も低い閾値を示した。2)マアジ筋肉抽出液は既報(鴻巣ら、1974)の分析に基づく合成エキスより2桁以上低い閾値を示したことから、既報の物質以外に強い刺激物質が含まれている可能性が強い。3)カゼインにイカ筋肉エキス成分を添加して魚に与えたところ、味覚器に刺激効果をもつアミノ酸等に摂餌促進効果がみられたが、この実験は次年度も行う必要がある。4)試験飼料を水で調製した場合と海水で調整した場合とで成績に差がみられたことから、塩分含量が嗜好性の一要素であることが示唆された。なお、ブリについては嗅覚応答についても調べたが、本年度はグルタミン他数種のアミノ酸に対する嗅球での応答を記録したにとどまった。 [アユ]1)味覚器は河川の礫に付着した藻類(珪藻を主体とする)の水抽出液に対し敏感に応答した。また、生物組織一般に広くみられるアミノ酸、核酸関連物質等に敏感であることが明らかになった。2)付着藻類の水抽出液をカゼインまたはアルブミンを基剤とした精製飼料に添加して魚に与えたところ、強い摂餌促進効果がみられた。3)付着藻類の水抽出液中の遊離アミノ酸を分析し、アミノ酸画分の摂餌促進効果を、市販の純品を精製飼料に添加して調べたところ、特に促進効果は認められかった。このことは、エキスの効果がアミノ酸以外の成分あるいはそれらとアミノ酸との協同作用によることを示唆した。
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