研究概要 |
本研究の目的は幼魚と特定の魚種の入網を阻止して底魚漁場の資源維持を計ると共に、網抵抗の逓減により漁具の省力化を計ることである。研究は先ず長崎,東京,北海道の研究機関等における聞取調査から、現用底びき網の構造とボトム・コントロールシステム(離底装置)について資料を蒐集した。その結果、本研究で実験の主体となるチェーン垂下式は既に同システムの一型として認められているが問題点も残されていることを確認した。研究は先ず同システムの中心的役割をもつチェーンの適正径とその動態について回流水槽で実験した。前者は大型電算機で理論的に求めた値を検証するための実験で試料には13〜22mm径のチェーン4本を用いた。後者は構造の異なる3種のチェーン網を用いた。次に単純チェーン垂下式網の最大の課題である入網量の増量を計る実験として、現用の大型トロール網の大型模型網を作成し、海上及び回流水槽において網口の拡網実験を行なった。また大目合の網地を網口に設けて網抵抗を逓減させる実験や網口前方に特定の魚種の入網を阻止するための威嚇チェーンを付加する実験も併せて行なった。実験の結果は次の通りである。 1.垂下チェーンは16mm径が最適であり、この結果は理論計算と略一致した。 2.網口の離底高さは増速に伴って高くなるが、袖網部のチェーンの配列によって静水時と略同じ高さに維持することが可能である。 3.大目合の網地を網口近くに設けることにより網口高さは浮上し、また抵抗は5〜10%減少した。なお網糸の太さの相違による縮網現象を認めた。 4.威嚇用チェーンはその装着場所によって安定度が異なる。また水中テレビ撮影からチェーンの着底部分から砂煙が発生し威嚇効果のある事を確認した。 今後は、この研究成果をもとに、新しい発想の網を設計し、模型網と実物網について実用化試験を行ない、この研究の進展を計ると共に、魚種を仕分けするという漁法の原理を確立したい。
|