研究概要 |
養魚を行うにあたって、飼育水の水質は非常に重要な問題である。飼育水は長期にわたって使用されると魚類の排出物及び残餌によって汚染され、それらの分解に伴い水中にアンモニアが増加する。しかし、飼育水を循環濾過するとアンモニアは亜硝酸を経て硝酸にまで酸化され、同時にリン酸も増加する。水中に硝酸及びリン酸が増加すると水のpHが低下し、さらに、水のアルカリ度も減少し、酸度が増加して、水が酸性化する。 循環濾過水槽内で魚類を長期にわたって飼育し、酸性化した飼育水中の陽イオン量を測定したところ、水中の陽イオン量が増加していることを発見し、その大部分がカルシウム及びマグネシウムであることを知った。 水を循環濾過するにあたり、種々の濾過材料を使用してみたところ、材料の種類により水中への硝酸及びリン酸の蓄積量並びにカルシウムの蓄積量が異なった。合成樹脂またはガラスからなる濾材を使用すると、カルシウム及びマグネシウムの蓄積は少なく、陽イオンとしてアンモニアが多量に蓄積し、飼育魚類の成長もよくなかった。大磯砂またはサンゴ砂のような濾材を使用すると、カルシウム及びマグネシウムの蓄積は多く、飼育魚類も順調に成長した。このことから、飼育水中のカルシウム及びマグネシウムの蓄積は餌料に由来するもののほか、濾材によって強く影響されることが示唆された。 海水魚を上記と同様な方法で飼育したところ、飼育海水中においても硝酸,リン酸の増加,pHの低下,アルカリ度の減少,酸度の増加による海水の酸性化を明らかにし得たが、海水中に多量に存在するマグネシウム及びカルシウムの影響により、それら陽イオンの増加を明確にすることができなかった。 水中に蓄積された陽イオン物質の飼育魚類に与える影響を今後の課題とする予定である。
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